17日間に渡り熱戦が繰り広げられたピョンチャンオリンピック2018。
日本勢は冬季オリンピック史上過去最高の13個のメダルを獲得、ライブで届けられる映像に熱い声援を送る日々が続いた。
そのなかでもスピードスケート女子団体追い抜き(チームパシュート)の金メダルには大いに沸いた。
それというのも、自転車競技のトラックレースでも同様の追い抜き競技があり、自分が指導する競技チームでは、この種目を最重要視しているからだ。
自転車競技の団体追い抜きは、4人が出走し、距離は4キロで行われる。
自転車競技の最大の抵抗は風圧だ。
長い時間一人でそれに打ち勝つためにはスピードを調整しながら、エネルギーの配分を考えなければいけない。
しかし、団体追い抜きでは、4人が先頭交代というテクニックを駆使しながら風圧をシェアし、より高いスピードを長い時間維持することが可能になる。
先頭に出たときには、FTPを大幅に超えるような出力で、後ろに下がったときには、それよりも少ない出力で走ることができる。
風圧をまともに受けた先頭の選手は、糖をエネルギーとして使う運動で乳酸が発生するが、後ろに下がり、風圧が少なくなれば、それも少なくなってくる。また、乳酸除去能力の高い選手は、再び先頭に出たときも高い出力を維持することができる。
競技力の違う選手4人の能力を、この競技時間のなかで最大限使うためには、先頭に出る時間も考えなければいけない。そして、どの選手をどの位置で走らせるのか、ということも重要になる。
奥が深い競技だと思う。
では、ここからは、Wattbikeの活用法を考えてみたいと思う。Wattbikeは、乗車中に簡単なアクションで負荷値を変えることができる。これを利用すると、このレースの先頭交代に近い状態を再現したトレーニングが可能になる。
先頭に出ると考えられる時間を高い負荷、レースで使用する回転数。後ろに下がる時間を低負荷、レースで使用する回転数と考えてみるといい。
具体例を一つ示してみよう。400バンクにおけるジュニアトラックの団体追い抜きの場合。レース時間は約5分。先頭時を15秒間、120回転で任意の負荷、または想定するワット。後方時を45秒間、120回転で先頭時の60~80パーセントの負荷、またはワット。これを、想定したレース時間の間、繰り返して実施する。これで、実践に近い状態を再現できる。競技場、競技種目が変われば内容を変えていけばいい。
風車に導入された空気量でペダルに掛かる抵抗を変化させることができ、その抵抗が実走に近い状態を作り出せるWattbikeだからこそできるトレーニングだ。
また、このインターバルトレーニングは乳酸除去能力の向上にも有効だ。
使用する自転車のホイール外周、使用するギア倍数、レースを走る距離、目標設定タイムがわかれば1分間あたりの平均回転数が計算できる。その回転数を持続できる負荷値を計画的に上げていくトレーニングも可能になる。
個々の能力を最大限チームとして活かしていくために様々なテクニックが必要になる団体追い抜き。チーム力を上げるために是非挑戦してほしい種目だ。
●オフィシャルサイト
・元競輪選手 菊池仁志の自転車道場
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