寄稿:合田祐美子・ 自転車競技ロード選手
私なりのPolar Viewの活用法
WattbikeではPolar Viewによって、大きく分けて3通りのペダリングタイプを示しています。
①8の字
②ピーナッツ
③ソーセージ
そしてこの3つのうち、③のソーセージ型が力を効率よく発揮している最も良いペダリングといわれています。その理由としては、ペダリングはクランクの円運動であるため、左右の脚が切り替わるポイントで、回転力のブレーキとなってしまう力をできるだけ抑えた方が効率的であると考えられるからです。よって、ペダリングのスキルを高めるためにはこの図形を①から③のようにすることが望ましいと言えます。
しかし、図形をより理想の形にすることが「目的」ではありません。Wattbikeに乗って、モニターを見ながらペダルを回していると、ついついモニターに意識がいってしまって、よりきれいな楕円形にすることに熱が入ってしまいがちです。しかし、モニターに示される図形はあくまで自分のペダリングが視覚化されたもの、結果として出てきたものです。そのため、図形をどうにかしようとするのではなく、普段のペダリングではどのような図形になっているのか、引き上げを意識した場合はどうなるのか、臀部を使うとどうなるのかなど、身体へ意識を向けて、それを図形と照らし合わせることが大切ではないかと思います。
大学院時代、私はペダリングについて研究していましたが、同じ動作でも人によって異なる感覚を持っていることを感じる機会が多々ありました。例えば、ペダリングのペダルを回すという動作でも、上死点が意識しやすい人、下死点が意識しやすい人、引き上げ動作が効果的な人、向いていない人などなど。そのためペダリングのスキルに関しても、自分の身体に意識を向けることが、自分だけのペダリング感覚を得るきっかけにつながり、上達への一歩となるのではないかと思います。そして、このようなペダリングの感覚が身につけば、身体が何かおかしいなと感じる時、Polar Viewにより、その違和感が視覚化されます。私の場合、左右の脚では若干、右脚が左脚よりも力が強い傾向がありますが、日によってはそれが顕著に表れることがあります。また、股関節周辺の筋肉が疲れていると、引き上げ動作が上手くいかずに大腿四頭筋が疲れたり…。このような時、Polar Viewは自分で感じる身体の微妙な感覚の変化やズレ、違和感などのバロメーターとなります。
さて話は戻りますが、ソーセージ型が理想とされるペダリングにおいて、身体の使い方としてよく、踏むだけでなく、回すとか、引き上げるというように表現されます。私は大学院時代に、その「引き上げる」動作に注目し、足、膝、股関節というパターンで実験を行いました。同じ引き上げ動作でもどこを意識するかで、努力感やペダリング動作、パフォーマンスに変化が見られる傾向がありました。「股関節を使う」ことが重要であると最近よく言われていますが、意識できなければ動かすことは当然できません。実験を通して、また私が思うに、足でのペダルの円運動を意識してみる→膝を使って引き上げてみる→股関節(臀部)で引き上げるというように脚を三つに分解して、下から上に意識を移していってみることもペダリングを理解する一つの手段となるのではないか?と感じています。また、臀部を使ってペダリングを行うことはそう容易ではありませんが、普通の乗車姿勢よりも、下ハンドルを握ったポジションの方が意識しやすいのではないか?と思います。
ここまで、私の考えを述べてきましたが、これも一つのヒントとして、ペダリングについて自分なりに試行錯誤し、努力し、継続してもらえればと思います。
最後に、動きの理想や型はこれと示されますが、それをどのように感じるかなどの身体の感覚は人の数だけあると思います。色々な人から技術のアドバイスをもらうことは大切ですが、それを自分のものにするためには自分にしか分からない「感覚」を得ることが重要だと私は思っています。その「感覚」を得るためのツールとしてWattbikeを利用できるのではないでしょうか。
(合田祐美子選手は、6月24日に青森県で開催される全日本自転車選手権大会ロードレースに出場します。)
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