合田祐美子(自転車ロード選手)コラム
「技術(ペダリング)の練習 ~「いつ」行うか~」
今回は、ペダリングについて「トレーニングの目的」の観点からお話ししていきたいと思います。
私もペダリングは完璧とは言い切れず、Wattbikeやローラーを使用して自分のペダリングの修正やきれいな回転を目指した練習を時々行っています。皆さんも方法は様々であれ、ペダリングの練習を行うことがあるのではないかと思います。
前回の記事で書かせていただいたように、身体に意識を向けてペダリングを行うことがその技術の習得には大切であると思いますが、その練習を「いつ」行うかということも大切なポイントとなります。
自転車の練習をするといえば、ロード練習に行くことや、ローラーに乗ることが浮かぶと思います。そして、今日の練習は?と聞かれると、何分何ワットでとか、何キロ走るとか、全力でTTを行うとか…。体力の向上を目指した練習の「メイン」となる部分を答えると思います。しかし、練習計画が1週間、1ヶ月、1年と立てられるように、1日、または1回の練習の中でもきちんと内容を区別して行うことが大切です。
1日の練習はまず、身体をスポーツが行えるように温めるためのウォーミングアップから始まります。ストレッチや軽い体操、ローラーやロードバイクで心拍を上げたり、筋肉をほぐしたりします。急激に激しい運動をすると息が上がったり、脚が思うように動かなかったり…。おそらくこのような経験は皆さんあると思います。私も学生時代はあまり重要性を感じていませんでしたが、年齢を重ねるにつれウォーミングアップの必要性を実感しています。また、夏場よりも気温の下がる冬場では特に、レース前に身体を温めておくことが必要です。
続いて技術練習です。自転車競技の場合、「技術」の練習と言われてもパッとしない方も多いかもしれません。しかし、「ペダリング」は自転車に乗る上で重要な技術です。この技術を軽視して、ただパワーを上げることだけに取り組む方もいるかもしれませんが、私は今でも良い「ペダリング」を身につけられるように意識して練習を行っています。その方法は固定ローラーであったり、3本ローラーであったり、Wattbikeであったり。また、歩行動作などでも行っています。そしてこれらを行った後、メインの練習を行っています。
メインの練習が終われば、最後はクールダウンです。ウォーミングアップよりもきちんと行えている人が少ない印象がありますが、次の練習に疲労を残さないため、疲れによって計画通りの練習が行えるようにするため、身体の故障を防ぐためにとても重要です。私は、心拍数をゆっくり下げていくようにペダルを回したり、ストレッチをしたり、アイシングをしたりしています。
ウォーミングアップもクールダウンも、最初は言われたからするというのが一般的かと思います。しかし、身体の感覚が研ぎ澄まされてくると、誰かに言われたから、良いと言われているからというのではなく、自分でその効果や重要性を認識できるようになると思います。
ここまで1回の練習を大きく4つに分けて見ていきましたが、最初に述べたように、技術練習は「いつ」行うのが良いのか、について書いていきたいと思います。ここでは技術練習はペダリングの練習として考えていきます。
メインの練習の前にやっても後にやっても、「ペダリングの練習」を行ったという表現に間違いはありません。しかし、前に行う場合はウォーミングアップで身体を温めるのと同様に、メインの練習で使う身体の使い方を整えることが大きな目的となります。一方、後に行う場合はクールダウンの要素が大きく、技術練習の意味はなくなってしまいます。疲れた状態で行っても、すでに練習を終えた後で復習の意味でやっても、技術練習の効果はなくなってしまうのです。
1日の練習の中で最も時間を費やすのがメインの練習となるわけですが、もし、何も技術練習することなくメインの練習を行った場合、良くない身体の使い方で長時間練習を行うことになります。良くない身体の使い方で練習するのと良い身体の使い方で練習するのとではどちらが良いかは誰にでも分かることだと思います。
しかし、「身体に意識を置いてペダリングをすること」、このことは単調であり退屈であり、ロード練習の前に、インターバル練習の前に、わざわざ時間をとってやるなど時間の無駄だと感じる方も多いかもしれません。しかし、何もせずに強度の高い練習を行うのと、ペダリングの練習で自分の今日の身体の状態、例えば使えてない部位や疲れている筋肉、左右のバランスなどを把握し、修正をかけてからメインの練習を行うのとでは大きく違ってきます。もちろん断然、ペダリングの練習を行ってからメインの練習に移ることで、練習内容が充実することは確かだと私は感じています。今日の身体の状態を無視してメインの練習を行うと、使えていない筋肉があることや、疲れている部分をより疲れさせてしまう原因にもなるのではなかと思います。
また私は最近、ローラーとWattbikeを併用してペダリングの練習を行ったりしています。自分の感覚とPolar Viewでの結果を照らし合わせることができ、ペダリングという技術の改善や向上に効果的ではないかと感じています。
ここまでペダリングの練習について、「いつ」行うべきかについて私の考えを書かせていただきましたが、「ウォーミングアップの一環としてペダリングの練習を行ってからメインの練習を始めてみること」に納得する方、興味を持ってくだる方がいれば嬉しく思います。
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