武田豊樹選手は2013年9月に初めてイギリス、イヴシャムにあるWattbike Laboを訪れてスポーツ科学者、エディー・フレッチャーのセッションを受けました。今回はそのセッション内容の一部をご紹介します。
まずワットバイクとソフトウエアについて基本的な説明を行った後、武田選手のバイク上のポジション確認を行いました。その後、武田選手にレッグスピードとパワーのドリルを紹介しました。
その中ですぐに彼のペダリングが非常にスムーズであることが確認できました。これは男女、種目に関わらず全てのトップサイクリストに共通に見られる重要なスキルです。ワットバイクを使えばPolar Viewを通して容易に左右の出力バランスとピークフォース角度を見ることが出来ます。下図がそのときの武田選手のものです。
これは150rpmで1740Wを出力したペダリングストロークです。左右のピーク角度は共に117°そして左右の出力バランスは50:50 (正確には50.7%:49.3%)です。ワークアウトの間中、このようなグラフが一貫して示されました。
次に20分のウォームアップ・メニューを行いました。これはイギリス自転車連盟のプロトコルをワットバイクに適した形にアレンジしたものです(下表)。武田選手は初めてでしたので空気抵抗レベルを1(Pro) に設定して心拍数を低く抑えながらレッグスピードへの意識を高めました。
5分 | 90回転 |
2分 | 95 |
2分 | 100 |
2分 | 105 |
1分30秒 | 110 |
30秒 | 125 |
2分 | 90 |
6秒 | Max |
1分 | 90 |
6秒 | Max |
1分 | 90 |
6秒 | Max |
2分42秒 | 90 |
下図はウォームアップ全体を通しての形です。
回転数漸増のウォームアップにおいて模範的な図と言えます。ピーク角度が深く出ているところが6秒マックスでの全力漕です。この図からもペダリングのスムーズさと左右バランスの安定が解ります。
6秒でのレッグスピードは194rpmまで上がりピークパワーは1700W近くに到達しました。(空気抵抗レベル1)
次にスプリントパワーのワークアウトに入りました。5秒間マックスと2分30秒のレストで、最初の4セットはレベル6でシッティング、次の4セットをレベル8のスタンディングで行いました。ターゲットとして回転数は160rpm前後、パワー出力1800W以上を狙いました。
その結果は下記グラフです。
ワットバイクに順応するのに数セットを要しましたが、その後の回転数とパワー出力の一貫性が見て取れます。4~8セットは一貫してピークパワー1800Wを超えています。更に下図からペダリングテクニックの完成度の高さが解ります。
高出力をひと通り行った後はレッグスピードをコントロールするワークアウトを行いました。
10秒オン/50秒オフをレベル5で150rpm、1000Wをターゲットにしました。
下のグラフと図がその結果です。
この時点では完全にワットバイクに順応しました。ペダリング技術は下図の通り見事なものでした。
実技セッションの後は十分な時間をかけてミーティングを行いました。
まずは実技セッションで確認された事実について関係者間で認識を共有しました。そして武田選手の現在、過去の振り返り、そして未来について、その中でワットバイクがどのように貢献できるかまで議論が及びました。リラックスした雰囲気のなかでも互いにプロとして真剣かつ密度の濃い話し合いは日が暮れるまで行われました。武田選手はこの日のことを次のように回想しています。「正直なところを言うと、久しぶりの海外でしかも長旅の直後に、あんなにきついセッションが待っているとは思っていなかったので面食らいました。しかしミーティングはすべてが刺激的で興味深い内容でした。時差ボケがあり、体を動かした後だというのに眠気を感じることも全くなく、それだけ集中していたのだろうと思います。」
こうして長い一日が終わりました。この時間を共有した5人の男たち。この中の誰がこの日が長いジャーニーの始まりに過ぎないことに気付いていたでしょうか。この日から極みを目指すトッププロとの共創の旅が始まりました。
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