大切なレースに向けての調整、これほど難しいものはないように思います。練習、食事、休養など、こうやるのが良いとマニュアルはありますが、練習メニューが一人一人のレベルで異なるのと同様に、調整でも「自分の」方法を見出す必要があります。
また、最も重要なことは「レースで最高のパフォーマンスを発揮することを第一に考える」ことだと思います。日にちが迫ってくるとどうしても、あれをしなきゃこれをしなきゃと、足りていないことに目がいってしまいます。しかし、練習量が増えては疲労が増えるだけだし、新しいことをしてしまっては筋肉痛など身体へのダメージが生じてしまいます。そのため、レース数週間前からのトレーニングには「心」が一番重要ではないかと思います。「何のためのトレーニングなのか?」これを第一に考えれば、やるべきことは明確になってくると思います。
私も学生時代はよく、トレーニングとレースを分けられていませんでした。もっと強くなりたい、練習しないとという気持ちはパフォーマンス向上に欠かせません。しかし、自分が最も重要視しているレース前では、自分は強いと信じて身体に余裕を与えてあげるべきだと思います。私の場合は3週間前まではいつも通りか若干、量を減らした練習をして、2週間前からは質を保ったまま量を減らして疲労を取り、気持ちをレースに合わせていけるようにしています。レース当日は、食事やウォーミングアップなど、気合いを入れて色々と試してみたくなるかもしれませんが、ここでも普段通りに、またはきちんと以前から行なっていることや試したことがあることを行うべきです。レースというだけでメンタル的に相当な緊張やストレスを受けています。そのため、なるべく負担となる他の要因は排除してレースに思いっきり集中できるような環境を準備しておく必要があります。
ここまで、「大切な」とか「重要視している」レースと言ってきましたが、これにも理由があります。年間を通して何レースも走るわけですが、その中でも一番勝ちたいレース、成績を収めたいレースがあると思います。レース前の「調整」は言葉の意味通り、パフォーマンスの向上ではなく、維持と現在の力の最高値を引き出すための蓄えの期間です。そのため、毎回のレースで調整を繰り返しているとパフォーマンス向上は望めない、むしろ体力的には低下してしまうことになります。そこで、最重要としているレースの前にあるレースは、また違った意識で臨んでいます。
一番大切なレースではないにしても、レースに変わりはありません。だから、レースでしか経験できないことを全力で達成します。完全な調整は行わないにしても、2日前から頭をレースへ向け、前日は身体の動きや調子を確認しながらバイクに乗り、レース当日は3時間前には食事を済ませて、1時間半前からアップで身体を温めるとともに心を集中させる。ただ勝つことだけではなく、その日その日の目標を設定して臨みます。客観的な評価は勝ったか負けたかになりますが、自分で立てた目標を達成できたかももう一つの評価となります。ただそれは人にどうこう言われるものでもなく、気にするものでもなく、「自分」で分析すれば良いものだと思います。勝ち負けだけに左右されては、あの時ああすれば良かった、こうすれば良かったという後悔の方が大きくなってしまいます。勝負には必要なことですが、感情は一時的なもので終わらせるべきです。それよりも、自分の大切なレースでのためにこのレースでやるべきことは何で、どれだけそれを達成できたかを冷静に分析していくことが次のステップアップにつながり、最重要レースへの一歩となると思います。私も、なかなか勝ち負けへの執着が払い取れませんでしたが、このように自分の本当の目標を明確にして、そこへ向かうためのプロセスとして一つ一つのレースを捉えていくと、自分のレースを客観的に振り返られるようになりました。さらに、きちんとした目的を持って臨むからか、より集中してレースに臨むことができるようになったと思います。
「自分の最大の目標は何か?」これを第一に考える。この軸をぶらさないことで、レースまでの過ごし方が少し変わるのではないかと思います。
6月は、下記の大会に出場予定です。
17日(日) 8:45~ 会場 / 石川県羽咋郡志賀町宿女周辺特設ロードレースコース
第22回全日本選手権個人タイムトライアル・ロードレース大会 -カテゴリ女子エリート-
22日(金) 12:00~ 会場 / 島根県 益田市種・北仙道周回コース
第87回全日本自転車競技選手権大会ロードレース -カテゴリ女子エリート-
合田祐美子 公式ウエブサイト
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