早大ボート選手 インカレへのアスリハ Vol.3(最終回)

2017年09月16日

早稲田大学の北村綾香選手は7月1日の部内選考レースで上位に入り、全日本大学選手権(8月31日~9月3日)にダブルスカル(二人漕ぎ)で出場することが決まりました。

ダブルスカルのパートナーは同じ3年生の米川志保選手です。米川選手は7月下旬にブルガリアで開催される、U23世界選手権に日本代表として出場するため、ペアでの練習は7月27日開始となりました。

内田大介監督と話し合いの上、北村選手については米川選手が合流するまでの間、リハビリを優先させるそこまでの取り組みを継続することになりました。そして7月4日からワットバイクでのトレーニングを再開しました。そこからは、前回(Vol2)記事でご紹介した2パターンに加えて次のようなワークアウトをレベル7で、仕事量を徐々に上げていく形で取り入れました。

【パターン3 例】

10 × 1’15”on/1’15”off   on105rpm/off90rpm

10 × 1’45”on/1’15”off   on100rpm/off90rpm

選考レースを通過してひと段落したこともあり、改めてペダリング技術(下肢の動作)への意識を促しました。特にリカバリーセッション(L3で90rpmを30分間など)では股関節、殿筋、ハムストリングスへの意識を徹底してローイング動作への効果を狙いました。

北村選手の反応は非常によく、イギリスのスポーツ科学者から「Probably the smoothest riding I’ve seen from a rower!」(おそらく今まで見たボート選手の中では最もよいペダリングだ)という評価が出てくるまでになりました。

また、レッグスピードが確実に向上していることも確認できました。これはローイングにおける出力アップに貢献する要素です。

毎日のトレーニングは全般的に安定してターゲット通りの出力発揮を繰り返していました。

水上練習はチーム事情からクルーボートに乗って長めの距離を漕ぐことがありましたが腰痛再発の兆しは見られませんでした。7月8日には日本代表合宿中の米川選手と2kmだけ乗り合わせてイメージ確認を行いました。この時点ではすべて順調のように見えました。

好事魔多しということか、新たな試練が訪れました。水上練習で肋骨に感じ始めた違和感が痛みに変わり、7月14日に病院で肋軟骨損傷との診断を受けました。

北村選手本人は当然のことで気落ちしたようでしたが、これはボート選手にはよくある障害で、まだインカレまで一カ月半あることやちょうど大学の試験期間であったことから当方はよいタイミングで発生してくれたと捉えました。内田監督とも相談して暫く水上練習は一切中止してすべてのトレーニングをワットバイクで行う方針を決めました。

7月15日から23日まで1日2セッションのワークアウトを行うようにプログラムを作り替えました。午前は従来通りのトレーニング、午後はリカバリー(30~40分L3/90rpm)をルーティンとしました。北村選手にはこの間、(1)バイクで更にフィットネスを高める(2)上肢のケアをしっかりして早期回復に努める の二点に集中すればよいと話しました。また、上肢に痛みのある間はハンドル位置を高くするようにしました。

7月18日頃から痛みは少しずつ緩和されてきましたが22日にローイングエルゴメーター(陸上ボート漕ぎマシン)を漕ぐとまだ痛むという状態でした。

ワットバイクのトレーニングについては引き続きターゲット通りの出力を積み重ねており有酸素ベースは更に向上していました。痛みがひけば更にフィットネスが上がった状態で水上に戻れるので、焦らずに怪我の治癒を待とうという考えを北村選手と共有しました。

水上を離れてワットバイクトレーニングのみを行ってから2週間後の7月27日、北村選手は水上練習に復帰しました。米川選手とダブルスカルを組んでの練習でしたが痛みなく漕ぐことができました。

米川選手というパートナーに恵まれて水上復帰は順調に進みました。復帰翌々日の7月29日に北村選手から明るいメッセージが来ました。「だんだんフルメニューへの移行ができそうなパフォーマンスができています。まだ時間があるので焦らずにさらにパフォーマンスを上げていきたいと思います。」

ここからインカレまでの1か月は監督、コーチの指導の下、米川選手と協調してレース準備のよいトレーニングをやっていけることを確信しました。

北村選手にとってはとても辛く厳しい期間だったと思います。しかし、同選手はただの一度も休まず、一切の手抜きをせずに48回、ワットバイクトレーニングに向き合いました。結果的に持久力もスプリントも格段に向上した状態で米川選手とのダブルスカル練習に入ることができました。

8月のあるセッションファイルについて、イギリスのスポーツ科学者、エディー・フレッチャーからのフィードバックの抜粋です。「Excellent workout, balance, technique, leg speed and power – love it!」

早稲田大学チームは8月上~中旬に山梨県本栖湖で合宿を行いました。合宿終了直後に北村選手から連絡がありました。「水上の練習量が増えましたが怪我なくフルメニューをこなすことができました。レースペースのスピードも良いものが出ていましたので大きな手応えがありました。」

8月31日、埼玉県戸田ボートコースにて全日本大学ボート選手権が開幕しました。

早稲田大学女子ダブルスカルは初日の予選を1着で通過、そして9月2日の準決勝も1着。

迎えた9月3日の決勝は日本体育大学に続く2着となり、2位という結果で2017年のインカレを終了しました。

優勝はなりませんでしたが、3か月前にはレースに出るというイメージすら持てなかった中、限られた期間でのリハビリトレーニングは成果を出したと評価しています。

写真提供、記事協力: 早稲田大学漕艇部

http://www.wasedarowing.net/


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