菊池仁志コラム 飛躍への原動力。世界に羽ばたくために。Vol.8

2018年09月05日

パワーについて書いてみたいと思う。

自分が現役競輪選手の頃、今から30年前の20歳代後半のとき、その時代はパワーという表現はなかったが、重いギヤで山を上がる、重いウエイトを上げられる、力=競技力という考えが多かったように思う。

今では当たり前のように行っている、ウオーミングアップやクールダウン、体幹トレーニングやストレッチ、故障を予防するためのアイシングなども、それを確実に実施している選手は少数だった。

インターネットで調べることも、ましてやその場で検索できる便利なスマホもなく、限られた情報のなかで何が最善か自分自身で探らないといけなかった。
先輩選手が行っていたトレーニング内容を継承していくトレーニング方法が多かったように思う。
その当時のレースでは、そうしたトレーニングが最善だったかもしれない。

しかし、時代の変化とともに、レースで使う機材、レース内容などすべてが変化してきた。
その時々のレースで勝者となるのは、他の選手たちにアドバンテージがあるトレーニング方法などを模索し、進化している選手たちだ。

力=競技力もあながち間違いではないが、近年ではパワーという言葉ができている。 パワーを簡単に言えば、重い負荷をいかに速いスピードで動かせるかということだ。過去の概念では、「重い負荷」=力であったが、そこにスピードが加わったと考えてもらえればわかりやすいと思う。

自分が指導するときによく言っているのは、「キレ」と「スピード」。これがあれば自転車競技では有利に戦える。キレとは、短い時間でスピード上げられること。スピードとはその選手の持つ速さのことだ。

身体に蓄えられているエネルギーは有限だ。
レーススピードの変化に短い時間で対応できれば、エネルギーの消耗も少なくなる。そうなればゴール付近で多くのエネルギーが残り、勝つ確率が高くなる。

例えば、ロードレースで、アタックの応酬になった場合。「キレ」と「スピード」のある選手は短い時間で高いスピードに到達できる。そのため、最大で筋力を使う時間が短くなり、エネルギーを温存することができる。また、他の選手にスリップストリームに入られて利用されるのを防いだり、前の選手に追いついたりするときなどに、短時間で対応できる。

トラックレースも然りだ。スプリントでは「キレ」と「スピード」があれば、相手選手に対して有利にレースを運べる。また、競走系の中距離種目、タイムトライアル系の種目でもそれはいえる。短い時間で高いスピードに到達できることは、すべての種目で有利にレースを運べる。

これをWattbikeのトレーニングでどう養っていくのか。

Wattbikeのトレーニングプロブラムのなかに「最大パワー6秒間(Power peak 6”)」というメニューがある。
このメニューについては前回ご紹介したが、そのときは、負荷と回転数の話だった。つまり、「負荷×回転数=ワット」ということについてお話しした。今回は、どういう意識で踏めばレースに役立つか、ということについてお話したいと思う。

実践に必要な「キレ」と「スピード」とは、いかに早くトルクを立ち上げ、短い時間で高いワットを出すか、ということになる。これができれば、高いスピードに短い時間で到達できるために、レースで有利に戦うことができる。

最大パワー6秒間の後半に高いワットがでることも悪いことではない。しかし、その状態をレースに置き換えてみると、ゆっくりとスピードが上がることで他の選手に余裕を持って後ろにつかれ、利用されることが多くなる、ということになる。

最大ワット(パワー)=重い負荷×高いスピードだ。
スタート直後にペダルに掛かる重い負荷をいかに早く踏み込めるか(早く動かせるか)。そして、その重い負荷をいかに回転運動に変え、いかに早く最大ワットを更新するか。6秒計測メニューを実践に役立てるためには、そこが重要になる。

最大ワット(パワー)を上げるためには、全身の筋力を上げるためのトレーニング、その筋力を上手く連動させてペダルに荷重していくためのトレーニング、筋肉を速く動かすためのトレーニングなど、様々なトレーニングが必要だ。

「最大パワー6秒間(Power peak 6”)」を利用するときは、どのタイミングで最大パワーが出ているか、そこに注目してもらいたい。


●オフィシャルサイト
・元競輪選手 菊池仁志の自転車道場 https://k-fitting.com/

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